4.赤ちゃんにとってなぜ母乳がよいのでしょう

母乳育児をうまくすすめるには!

母乳を飲ませるお母さんと飲む赤ちゃんの共同作業がうまくいけば母乳育児は成功します。
産後、「赤ちゃんを産んだらすぐに母乳が出るものと思っていました」という声を聞きますが、本格的に母乳が出始めるのは、2~3日経ってからが多いのです。
「赤ちゃんは自然に母乳を上手に飲むものと思っていました」という方も多いのですが、生まれてすぐのまもない赤ちゃんは、タイミング良くおロに含ませないとうまく飲めないのです。
妊娠中から必要な手入れをして、授乳のポイントや赤ちゃんのお世話の仕方を学び、産後の母乳育児がスムーズに始められるようにしましょう。


赤ちゃんにとって充分な栄養が含まれています
母乳には、蛋白質の中のアミノ酸がミルクより多く含まれています。脂質では脳の発育に大切な高級不飽和脂肪酸がたくさん含まれています。
そして赤ちゃんの成長に合わせて調整された母乳が出てくるともいわれていますし、赤ちゃんが未熟児だった場合、そのお母さんにはより多くの栄養素を含んだ消化しやすい母乳が出て来るといわれ、未熟児にかかりやすい壊死性腸炎を予防します。


母乳は赤ちゃんへの予防接種の役目もあります
「分泌型免疫グロブリンA」という抗体は、感染の原因となるものの働きを抑える働きがあります。また、「ラクトフェリン」は病原体の働きを抑え炎症を治めると言われています。特に最初の頃に出る“初乳"には、多量に感染から守る物質が含まれています。
※初乳:最初に出る黄色や透明のトロリとしたお乳のことです。免疫だけでなく胎便(子宮の中で飲んでいた羊水が、水分を失って変化したもの)の排泄を促す役割もあります。


アレルギーを防ぎます
「分泌型免疫グロブリンA」という抗体は、感染の原因となるものの働きを抑える働きがあります。また、「ラクトフェリン」は病原体の働きを抑え炎症を治めると言われています。特に最初の頃に出る“初乳"には、多量に感染から守る物質が含まれています。
※初乳:最初に出る黄色や透明のトロリとしたお乳のことです。免疫だけでなく胎便(子宮の中で飲んでいた羊水が、水分を失って変化したもの)の排泄を促す役割もあります。


愛情がたっぷりです
お母さんの温かい胸の中で、赤ちゃんはおっぱいを吸い、おなかにいた頃から馴染んでいた声と匂いに安心します。
お母さんも無心におっぱいを吸い、時に天使の微笑みを見せるわが子に強い愛着を感じることでしょう。母と子、そのどちらもが満足できるのが母乳育児の最もすばらしい利点といえるでしょう。


お母さんの産後の回復をよくします
赤ちゃんにおっぱいを吸われると、子宮を収縮させるホルモン(オキシトシン)が出て、子宮の戻りをよくします。
オキシトシンには母子の愛着を高める作用もあります。


母乳は経済的、しかもダイエットできる?
おっぱいを1ml出すことによって0.65kcalのエネルギーが消費されるといわれています。つまり、おっぱいを100ml出すことによって、お茶碗半分弱のご飯を消費したことになります。



妊娠中は締めつけない下着を

おうちではブラジャーなしで過ごすのが理想的です。おっぱいがゆらゆらと揺れるのが自然のマッサージになります。
また、ワイヤー入りのブラジャーなどで圧迫しないようにしましょう。



オリーブ油湿布(妊娠37週から始めます)

乳頭に白っぽい“垢(あか)"のようなものがついているときに行います。
① 入浴前に行います。
② オリーブ油(ベビーオイルでもよい)を浸したコットンを乳頭に当て、ラップをします。衣服にオイルが付着しないように気をつけましょう。
③ 10分経ったら入浴し、取り除いたあと、石鹸で十分に洗います。
④ 週に1~2回するとよいでしょう。



赤ちゃんの抱っこのしかた

赤ちゃんを抱っこする時は必ず頭とお尻を支えます。両脇に手を入れて抱き上げたりしないでください。また揺さぶるのも良くありません。



初めての授乳は?

赤ちゃんはお母さんのおっぱいの吸い方を覚えます。あるいはなめて味わいます。そしてまたお母さんの声と匂いを覚えるのです。



母児同室をおすすめします

退院後の生活に向けて、入院中から少しずつ練習を始めて行かれると良いでしょう。
赤ちゃんが泣くタイミングで授乳した方が自然です。
お母さんにとっても乳汁分泌の促進につながります。
お母さんの体調に合わせて少しずつ赤ちゃんと過ごす時間を増やしていくことも出来ます。



頻回授乳が母乳分泌をアップします

頻回授乳とは1回の授乳時間を長くするという刺激とは違います。1日に10~12回くらい授乳することをいいます。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって、母乳の分泌がよくなることが知られています。お母さんの脳からは①お乳を作るホルモンや②お乳を押し出すホルモンが分泌されます。



夜間の授乳を休まないほうがよいのです

母乳のホルモンは、昼間よりも夜間の方が多く分泌されます。生まれて間もない赤ちゃんは、おっぱいを少し飲んで、ちょっと寝て、また起きて…ということを繰り返しています。同室をしていると赤ちゃんの要求に合わせた授乳ができますね。



授乳の姿勢

横抱き・立て抱き・脇抱きがあります。

横抱きは基本的な姿勢です
立て抱きは首をしっかり支えます
脇抱きでも飲ませましょう


吸わせ方のこつ

● 赤ちゃんのほほとお母さんの胸を合わせるように密着させます。
● 赤ちゃんの上唇から下唇にかけて、乳首でなでるように触れて、大きく口を開けるのを根気よく待ちます。
● 大きく口を開けて、舌が歯ぐきより前に出てきたら、すばやく乳首をふくませます。
● 乳首の茶色の部分が見えなくなるくらい深いか、赤ちゃんの下あごとおっぱいがくっつくようになっているか確認します。浅い時はやり直しをします。
● 乳首をはずすときは無理やりせずに、赤ちゃんのおロの端をそっと押してみましょう。



おむつ交換のしかた

おむつのテープは、はずしたらすぐに2つ折りにします。尿をすると線の色が変ります。


汚れたおむつの下に、新しいおむつを入れます。


親指、人さし指、中指で足首を持ち上げます。


男の子はおちんちんの裏側やしわの中もきれいに拭きます。女の子は前から後ろへと拭きます。われ目の中も汚れていたらきれいに拭きます。こびりついているときは、お尻拭きを十分ぬらしましょう。


後ろまで拭きにくいときは、体を横にするとよいでしょう。


汚れたオムツを取る。


テープで止めます。指が2本入れば、OK。ゆるすぎないようにしましょう。



男の子は、必ずおちんちんの先を下に向けてからおむつをあてましょう。


両方の横もれ防止ギャザーが外側に出ていることを確かめます。



おっぱい SOS!

(1)「おっぱいが張っていたい!」
考えられるのは次の3つの状態です。

①うっ積
早い方はお産後2~3日から起こります。これは、母乳を作るためにおっぱいの中に血液が一気に流れ込んで循環がうまくいかない状態です。張って硬くなっている部分に溜まっているのは、ほとんどが血液ですので、母乳の分泌はまだそれほど多くはみられません。38℃くらいの発熱がみられる場合もありますが、この状態は大体2日くらいで治まり、その後母乳の分泌はよくなってきます。

うっ積のときは・・・
1. 血液の循環をよくするために頻回に飲ませます。
2. 熱や痛みを伴う場合は、(母乳を飲ませた後に)その部分をアイスノンや冷たいタオルで冷やしてください。(冷やしても母乳は止まりません。)



②うつ乳
母乳の分泌のよい方にみられます。赤ちゃんが飲みきれず乳房内に溜まっている状態をいいます。
溜まっている母乳を搾れば楽になりますが、赤ちゃんがたっぷり母乳を飲んでいる場合は、搾りすぎると、また、たくさんの母乳が作られることになり、お母さんの体のほうが疲れてしまいます。赤ちゃんがおっぱいを飲んだ後も張ってつらいようであれば、軽く冷やしてみましょう。
ただし、一部分だけしこりになって痛い場合や、赤くなったり、38℃以上の発熱が続く場合は、乳腺炎の可能性もありますので、その部分を冷やしながら、診察をお受けください。



③乳腺炎
母乳を作る組織に炎症を起こした状態です。乳頭の傷やうつ乳の状態から細菌感染を起こすことが主な原因です。
乳腺炎になると、炎症を起こした部分が硬く、赤くなり、ズキンズキンと痛むこともあります。また、母乳の出が悪くなり、寒気がしたり、高熱がでます。
乳腺炎が疑われるときは、応急処置として痛む部分を冷やし、出来るだけ早く診察をお受けください。

(2)搾乳のしかたがわからない
搾乳しようとするおっぱいと同じ側の手で搾るとよいでしょう。
親指と人さし指を乳輪にあてて、指の腹を合わせるようにして圧迫します。乳頭だけを圧迫するのではなく、乳輪と肌との境界線あたりを圧迫するのがポイントです。
しごいたりすると皮膚が傷つきますので、気をつけましょう。

(3)赤ちゃんに吸われると乳頭が痛い
乳頭の状態をよく観察してみましょう。赤くなったり、みずぶくれや傷が出来ていませんか?
乳頭が痛む場合は基本的には授乳時間を短くするか、赤ちゃんに吸わせることを一時的に中止して、乳頭を休ませ哺乳瓶に母乳を搾って飲ませます。
どうしても吸わせたい場合は、授乳を続けてもかまいませんが、傷がひどくなると乳腺炎になってしまうこともあります。いずれにしても、診察をお受けいただければお薬を処方しますので、お薬を塗りながら無理のない程度に授乳を続けましょう。



断乳よりも卒乳を

卒乳と断乳はどう違うの?と思われるかもしれませんが、断乳というのは無理矢理おっぱいを止める方法で、卒乳というのは自分から母乳を欲しがらなくなる時期まで待つということです。
子供の自立のために、一人歩きが始まるころ(10ヶ月~1歳半くらいまで)で授乳はやめるほうがよいといわれてきました。確かに離乳食も進んできますと必要ないように思われるかもしれません。しかし、お母さんに甘えさせてもらえる心のよりどころとしてのおっぱいを無理に止めなくても、ちゃんと自立した子供に育つことがわかってきています。
働くお母さんが増えてきて、仕事の為に断乳を考えがちですが、子どもにとっては大好きなお母さんと別れて新しい環境で心細い思いをしているのだと考えれば、スキンシップのひとつとして「夜はおっぱいを飲ませています」でもよいでしょう。
また、お母さんが母乳育児を楽しみたいのであれば2・3歳に卒乳でもよいでしょう。いずれにしてもお母さんと赤ちゃんが無理なく自然にやめることができれば一番よいのです。



卒乳のこつ

卒乳する1ヶ月前から赤ちゃんに話しかけて心の準備をしてもらいます。小さくても赤ちゃんは状況をわかることができます。
おっぱいを飲ませたあとに、満足したところで話を始めるのがよいでしょう。
お母さんがやめることばかりに意識を集中していると逆に赤ちゃんはおっぱいにしがみついてきます。「今日はここまで」の気持ちで。
「だめ、いけない、赤ちゃんネ!」など禁止や否定的な言葉を使わないようにしましょう。
うまくいかないときは、「この子にはまだおっぱいが必要なのだ」と理解してあげることも大切です。
おっぱいが張ってつらくなったら、1回50cc以内で搾ります。搾りすぎるとまたおっぱいが多く作られるので気をつけましょう。冷やすと痛みが楽になることもあります。